たらこスパ生みの親は、元NHK交響楽団主席ホルン奏者・千葉馨氏だった
最近、10年前につぶやいたツイートに、なぜかいいねが増えている。メディアでたらこスパが取り上げられるたびに、検索でこのツイートが引っ掛かるようだ。
「壁の穴」取材終了。N響元首席ホルン奏者の千葉馨氏が、たらこスパ誕生のきっかけになったって初めて知った。日本のホルン奏者の草分け的存在。外国土産のキャビアで「スパゲッティ作ってくれ」とオーダーし、こりゃうまいとなり、同店の社長がキャビアの代わりとしてたらこで作ったのが始まり。午後0:57 · 2015年7月13日
壁の穴渋谷本店で食べた「元祖たらこスパゲッティ」(写真/梅津有希子)
「壁の穴」の元祖たらこスパゲッティ
10年前、JALの機内誌『SKYWORD』(2015年10月号)で「和のパスタ」特集を担当したときのこと。日本が誇るたらこスパ発祥のスパゲティ専門店「壁の穴」を取材した。まだ「パスタ」という呼び名すら日本に定着していなかった時代、ヨーロッパと日本は水質が違うため、イタリアのレシピでスパゲティを作ってもうまくいかなかったという。
『SKYWARD』2015年10月号(写真・梅津有希子)
日本でパスタを食べる文化が広まったのは戦後以降のことで、当時パスタといえば、スパゲティと具材をケチャップで炒めた「ナポリタン」のことだった。たらこスパゲティが誕生したのは1967年のこと。常連客だったNHK交響楽団主席ホルン奏者(当時)の千葉馨さんが海外で買ってきたキャビア缶を持参し、「これでスパゲッティを作ってほしい」とオーダー。あまりのおいしさに、同店の社長が「何かで代用できないか」といろいろ食材を試し、たらこで作ったのが始まりだという。
『SKYWARD』2015年10月号(写真・梅津有希子)
日本ホルン界の草分け的存在・千葉馨
NHK交響楽団主席ホルン奏者の千葉馨氏といえば、日本のホルン奏者の草分け的存在。筆者は幼少の頃からNHK総合の「N響アワー」を毎週楽しみに観ていたので、朗々とホルンを奏でる千葉さんのお姿をいつも拝見していた。
「壁の穴」取材時、「たらこスパゲティはNHK交響楽団のとある団員さんがきっかけで」と言われ、「誰だったんだろう?」と興味本位で「N響のどなただったんですか?」と聞いてみたところ、「千葉馨さんという方で」「あああホルンの!!」……というわけだったのだ。
常連客だったNHK交響楽団首席ホルン奏者(当時)・千葉馨氏が、海外で買って来たキャビアの缶詰を持参し、「スパゲティにのせてくれ」とオーダー。あまりのおいしさに、「似た食材で再現できないか」と、たらこを使って作ったのが最初とのこと。
ホルンといえば、千葉馨。
たらこスパといえば、千葉馨。
……まさか、日本ホルン界の草分け的存在、「バーチ」こと千葉馨氏が、日本が誇るたらこスパの生みの親だったとは。ちなみに、現在「壁の穴」は渋谷にあるが、以前は港区新橋付近にあった。当時NHKも近くにあり、お客さんの多くが同局関係者だったという。ところがNHKが渋谷に移転することになり、常連客を多く抱えていた「壁の穴」も渋谷に引っ越したと、同店関係者から聞いている。
"パスタにスプーン"も「壁の穴」が始まり
もう1つ驚いたことがある。パスタにスプーンを添えるのは日本だけといわれるが、これもきっかけは同店。たらこスパゲッティの作り方は、器にほぐしたたらこ、バター、塩胡椒、隠し味の昆布粉をあらかじめ入れておき、そこに茹で上げスパゲッティを投入。スプーンとフォークでザザザッとあえるというもの。そのスプーンとフォークを、そのままお皿の縁に添えた、ということだったのだ。
そのスタイルを他店でもマネして、本来パスタを食べるのに必要のないスプーンまで広まっていったという。もともとは、たらこスパゲッティを作るための調理道具だったのだ。
ライター歴20年。トップクラスにおもしろい取材であった。この取材以降、たらこスパが食べたくなると「壁の穴」を訪れ、日本ホルン界の父に思いを馳せながら、元祖たらこスパゲティに舌鼓を打っている。
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